議会質問と答弁
2019年第4回定例会一般質問
1.男女共同参画条例における苦情処理委員会の改善について
3年前の2016年11月、世田谷区の戸籍窓口で婚外子差別が起きました。
結婚を機に戸籍謄本を取りに来た方が、戸籍の筆頭として母親の名前を書いたところ、「お母さんが筆頭のはずがない」と言われました。本人確認書類として写真付きのものがなかったので、本人確認のために「父親の名前を書く」ことを求められましたが、婚外子であり、父親の認知を受けていないので、「父親の名前は戸籍にはない」、と伝えたところ、対応した職員は「離婚しても父親の名前は残る」と言い、余白に父親の名前を無理やり書かせました。母と父が事実婚だったため、父親の名前は書けましたが、中には父親の名前を知らない人もいるはずです。戸籍を見た職員は、こういう戸籍もあるのね、と言ったとも聞いています。これは、明らかに婚外子差別です。これから約1年半の期間に、戸籍窓口対応の改善などを求めて、何度も区との話合いをもちましたが、らちがあかず、昨年4月、「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」により設置された苦情処理委員会にのぞみをかけて申立てを行ないました。
世田谷区の苦情処理委員会は区長の付属機関で、区長から委嘱された外部の有識者3人で構成されています。苦情処理委員会へ申立てがあったものを区が受付け、実際、委員会に諮問するかどうかを区長が判断するしくみになっています。
今回とりあげている婚外子差別の事案では、婚外子差別が起きないように戸籍窓口の事務のあり方の改善などを具体的に求めたものですが、申立て前約1年半の間、申立人が提案している改善策を拒否する理由を、戸籍法などを根拠にしていたにもかかわらず、苦情処理委員会での説明では個人情報の保護を理由とし、説明してきたものと理由が変わっていました。ちなみに、戸籍法の根拠はのちに覆されています。
申立人は、自分の事案がいつ審議されるのかも知らされず、委員会への出席を希望しましたが断られました。条例では、委員が必要とすれば委員会に呼ばれるという規定なので、現時点の取決めでは申立人が出席出来ないこともあるのでしょう。
しかし一方で、当該所管の職員は委員会に出席して直接弁明をしています。当日は委員3人中2人、事務局の生活文化部5人、関係者として地域行政部長と住民記録・戸籍課長、が出席して審議が行なわれました。これで公平公正、第3者の立場に立った結論を導き出せるのでしょうか?もしも、申立人が出席していれば、これまで聞いて来たことと違うことが説明されていることを指摘出来たはずです。
だから、委員会から出て来た意見が、なぜ提案に応えられないのか、「区が説明をしなさい」、という内容になったのではないでしょうか。
また、2018年の予算特別委員会で「離婚しても父の名前は残る」と発言し、「婚外子であった請求者に不快な思いをさせた」ことを区側は認めています。しかし、委員会では「発言が事実かどうか確認出来なかった」と婚外子差別があったと認定出来ないとしました。区は、大事なところを説明していないのではないでしょうか。
【質問1】
私が求めるのは、苦情処理委員会の第3者性の確保です。区長、つまりは所管の判断で申立てを諮問するかを決めるのではなく、ダイレクトに苦情処理委員会につなげるなど独立性を高めるべきです。区はどのように改善策を講じるのか、お聞きします。
【答弁1】
「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」では、「苦情申立て等」として、男女共同参画と多文化共生施策に関する事項について、苦情や意見の申立て又は相談ができるとしております。
苦情等の申立ては、人権・男女共同参画課が窓口となり、関係所管に申出内容に関する事実確認等を行なったうえで、区長は必要に応じ弁護士等の専門家で構成する苦情処理委員会の意見を聞き対応することとなっており、こうした流れは保健福祉サービス苦情審査会と同様でございます。
区民が苦情や相談を気軽に申出られるよう、専門相談員や苦情処理委員会に直接言えるようにするべきとのご指摘ですが、本区の申立て制度は、苦情や相談ばかりでなく、施策へのご意見も頂くこととしており、その区別が難しいことから、区職員がまずお話を伺うしくみとしたものです。
苦情申立て制度は、制度の開始から一年半を経過したところですが、引き続き制度の目的と利用者の視点に立ち、ご指摘の点や他自治体の取組み等も参考にしながら、「男女共同参画・多文化共生推進審議会」の意見も伺い制度の運用・改善に努めて参ります。
【質問2】
また、他自治体では、申立人の要望で委員会への出席を認めている委員会もあります。公平公正な審議会にするためにも、申立人の出席は必要です。改善を求めます。区の考えをお聞きします。
【答弁2】
「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」を昨年4月に施行して以降、これまで2件の苦情申立てがあり、いずれも苦情処理委員会に諮問し、その意見を伺っています。
条例では、「審議のため必要があると認めたときは、関係職員その他の関係人の出席を求めて意見もしくは説明を聞くことができる」と規定しておりますが、2件の申立てについては、申立書や関係資料をもとに審議が可能と判断し、苦情処理委員会が直接意見をお聞きすることは行なっていません。
制度の運用にあたっては、処理の流れがわかるなど、申立者や区民目線に立ち、透明性をもった制度である必要があると考えています。
ご質問の申立者が苦情処理委員会に直接意見を述べる機会を設ける点については、審議の公平性を図る観点も踏まえ、審議にあたる苦情処理委員会のご意見も伺い検討して参ります。
【再質問】
苦情処理委員会では、申立人が聞いていた内容と違う弁明のもとで審議が行
なわれています。再度、正しい内容で審議するべきではないかと考えますが、
いかがでしょうか?
【答弁】
男女共同参画・多文化共生条例における苦情申立て制度は、男女共同参画・多文化共生施策に関する事項について、区長に対し苦情もしくは意見の申立てを又は相談をすることが出来る制度でございます。
苦情の申立ては、施策に関する事項について行なうものですので、明文化したものはございませんが、1度に限られるものではないと考えております。単なる審議結果への不服ではなく、社会状況の変化や審議会時の情報に誤認があるなど、改めて苦情を申し立てる状況であれば、お話を伺うものと考えております。
2. インクルーシブな災害対策と復旧・復興支援の充実について
10月12日の台風災害で被災した皆さまに、あらためて心からお見舞いを申し上げます。また、あわせて現在、日々、本来業務をこなしながら罹災証明の発行など復旧復興に携わる職員の皆さまにも、敬意を表したいと思います。
災害が起きると、日常の人権意識が顕在化すると言われます。例えば、熊本地震では、呼吸器ユーザーの子どもが福祉避難所ではなく、地域の避難所で過ごすことが出来たそうです。
日頃から地域の学校、普通学級に通学していたので、どのような対応が必要なのかなどを地域の大人も子どもも理解していたこと、呼吸器を使っていることが特別なことではなかったことが理由です。インクルーシブ教育が、だれも排除しないインクルーシブな災害対策とつながることを示す事例です。誰一人として弱者にならないための災害対策といいますが、それには日常生活がどのように営まれているのか、が関係します。
【質問3】
災害時の排除は、日常の排除と地続きです。誰も排除しないインクルーシブな災害対策実現について、区の考えをお聞きします。
【答弁3】
区としましては、障害者も高齢者も様々な人が、災害時にもお互いに尊重しあい、自分らしく行動出来ることが理想であると考えています。
災害発生時における高齢者や障害者など配慮を必要とする方への支援は、地域防災計画等に基づきまして、福祉避難所の施設を確保するなど必要な対応をしてまいります。
ご指摘の点につきましては、区民の自助を推進するための公助の役割が重要という観点から、重要な視点であると考えております。そのため、多様な人々が日頃の暮らしから災害時にも避難行動に寄与するよう、普段の暮らしを通じて、事前から備えることが重要です。
今後も、庁内においても各部に対して、例えば、避難所運営マニュアルに記載のある要配慮者の必要となる支援事例等を平時から確認しておくことなど、平時から災害時も見据えた取組みを呼びかけるとともに、あわせて、総合支所と連携して区民への防災の普及啓発や取組みを進め、災害時においても多様な人々が互いに尊重しあえる環境整備に努めてまいります。
【質問4】
今回の災害では、区内の障害者の方々がどのように過ごしていらしたのか、例えば、視覚障害者に対する情報提供は十分だったのか?介助者の交替はスムーズに行なえたのか?避難所ではどのように過ごしていたのか?など、各団体に対して聞取りを行い、今後に活かしていく必要があります。今後の取組みについてお聞きします。
【答弁4】
区内の障害者団体16団体で構成される「世田谷区障害者福祉団体連絡協議会」では、11月11日に全体会を開催し、各団体における台風への対応状況についても意見交換が行なわれました。
団体からは、避難誘導方法の改善や視覚障害者への情報伝達のあり方等についてご意見をいただいたところです。
お話のとおり障害当事者の方々が、災害時にどのように過ごされていたのか実態を把握し、施策に反映していくことは重要であると考えております。ついては、障害者団体や障害者施設等への聞取りを行なうなど実態把握に努め、各種の防災計画やマニュアル等への反映に向けて、関係所管と調整を図ってまいります。
7月に福祉保健常任委員会で、苫小牧市の災害時やイベント時に対応できる障害者用の移動トイレ“とまれット”を視察しました。バスを使用して車イスごと入れるバイオトイレでした。世田谷区は障害者の災害時のトイレ問題はほとんど手つかずです。インクルーシブな災害対策にトイレ問題は欠かせません。
【質問5】
他自治体の事例を参考にしつつ、災害時に障害者も使えるトイレを設置出
来るよう準備を進めていくべきです。見解をお聞きします。
【答弁5】
今回、避難所として指定されている区立小中学校においては、校舎等に誰でもトイレが設置されており、また備蓄されているマンホールトイレについても、手すり等を備えたものを用意しておりますが、風水害の際の避難所として指定されている施設については、そうした設備のない施設も含まれているのが現状です。
これらを踏まえて、大規模災害発生時には、災害時のトイレは生活する上で不可欠なものですので、災害時のトイレ対策を推進している他自治体の事例等も参考に、重要な課題として検討してまいります。
世田谷区の地域防災計画は、女性の視点・多様性の視点を反映すると明記し、避難所運営マニュアルは、女性、要配慮者等LGBTなど多様な人々に多様性を踏まえた支援を実施するとしています。これをしっかりと実行すれば、インクルーシブな避難所に近づくことが出来ます。しかし、その徹底が出来ていないのが現状です。
今回の避難で、全盲の方が85歳の母親と妻の3人で避難所に行ったところ、住所的にこの避難所には入ることができないと追い返されたそうです。避難所は誰でも受け入れますので、そのことが徹底されていなかったのです。これは、追い返した人が悪いわけではなく、日頃から計画やマニュアルが徹底されていないことが理由です。計画やマニュアルは、大切に棚にしまっていても意味はありません。現時点では計画やマニュアルの理解と実践に向けた取組みに課題があります。
【質問6】
地域防災計画などを地域に徹底するための取組みを求めます。区の見解をお聞きします。
【答弁6】
地域防災計画の策定・修正にあたっては、災対各部が自ら所管する業務等に関して、内容の確認・修正等を行なっております。また、災対各部の職員行動マニュアルは、地域防災計画に基づき作成されており、当該業務に関連の深い他所管業務等については、事前に計画内容等を確認の上作成されております。
しかしながら、計画の全体像や自らの業務に直接関連のない分野については、理解や知識が不足している部分もございます。
そのため、平成28年度から平成30年度の3年間に渡って、庁内全職員を対象に、地域防災計画や防災に関する基礎知識についての研修を実施しました。今年度からは、新規採用職員を対象に同様の研修を実施しております。
ご指摘の点を踏まえ、危機管理室や総合支所など特に日頃から防災を業務とする職員の知識向上を図り、あわせて、例えば女性、高齢者、障害者など様々な人々の視点等について各職員が区民への普及啓発の場でも的確に説明出来るように、今後も引き続き取組んでまいります。
次にお聞きするのは、現在進められている復旧・復興の取組みについてです。
現在、担当所管の職員の皆さんは、通常業務を担いながら、罹災証明の発行などの業務をこなし、10月12日の発災以降、連日の長時間労働で業務をこなしていただいています。
特に今回の災害対応では、復興のための業務と同時並行でこなさなくてはな
りません。
中でも罹災証明発行の体制は厳しい状況にあるようです。
【質問7】
世田谷区震災復興マニュアルに沿って業務が振り分けられていますが、現
状を鑑み、職員体制の強化が必要だと考えます。区はどのように対応するのか?お聞きします。
【質問8】
今回、実際に震災復興マニュアルに沿って対応しているわけですが、机上で検討したマニュアルには課題があると実感したのではないでしょうか?震災復興マニュアルの見直しを行なうべきと考えます。区の見解をお聞きします。
【答弁7・8】
災害時において庁内の各部は、それぞれの通常業務に加えて応急・復旧業務をはじめとした災害対策課業務の取組みを並行して行なう必要があります。
「罹災証明書」の発行事務については、被害の大きかった玉川地域のまちづくりセンターだけではなく、地域行政部が全体調整を担い、都市整備領域の専門職を含めた全庁の応援体制により被災状況調査を行なっております。罹災証明書の発行業務のほかにも、義援金受入れ、災害見舞金の支給や災害援護資金の貸し付けなど、通常業務に加えて大きな負担がかかる所管については、部内や全庁の応援など体制強化について関係部と調整してまいります。
区では、こうした罹災証明、復旧・復興に必要な業務や担当所管、具体的な手順などを示した「復興マニュアル」を策定しておりますが、災害対策業務と通常業務を同時に取組むことの難しさを改めて認識しました。
今回の教訓を活かし、復興マニュアルについて早期に点検を行ない、来年度、修正予定されている地域防災計画等との整合を図りながら必要な修正を行なってまいります。
以上